* MILES DAVIS / EVIL IN ELECTRIC FACTORY / ELECTRIC FACTORY 1970 - DEFINITIVE EDITION (2CD+LTD. DVD)
2022 VOODOO DOWN Records 016 (VDD 2022-016)
Supervised by SO WHAT! Label.
Recorded Live at Electric Factory, Philadelphia, PA, November 15, 1970
Soundboard Recording // Original Remastered by VDD 2022.
Miles Davis - trumpet
Gary Bartz - soprano saxophone, alto saxophone
Keith Jarrett - electric piano, organ
Michael Henderson - electric bass
Jack DeJohnette - drums
Airto Moreira - percussion
DISC 1
1. Band Warming Up
2. DIRECTIONS
3. HONKY TONK
4. WHAT I SAY
5. SANCTUARY
DISC 2
1. IT'S ABOUT THAT TIME
2. FUNKY TONK
3. THE THEME - Applause
マイルス・デイヴィスの愛好家から絶大の信頼を受け、数々の名盤を生み出した伝説のレーベル“ソー・ホワット”。その“ソー・ホワット”レーベルの完全監修を受け、2020年末に発足したのが“ヴードゥーダウン・レコーズ(以後VDD)”です。初めて“SO WHAT!”のレーベル名を記載することを許可されたことからも信頼の厚さがうかがえます。丁寧なマスタリング、編集、こだわりの帯付アートワーク、美麗なピクチャー・ディスクのプレス盤。新鋭レーベルながら早くもマイルス・コレクター必携アイテムとして注目を集めています。
1970年のエレクトリック・ファクトリー公演が登場です。1970年はバンド・メンバーの入れ替わりが激しく73-75年マイルス・バンドへの過渡期ともいえる時期。初頭にはウェイン・ショーター、チック・コリア、デイヴ・ホランド、ジャック・デジョネットにアイアート・モレイラだったところにジョン・マクラフリンが襲来し、4月頃になるとウェイン・ショーターはデイヴ・グロスマンに変わります。そして6月のフィルモア公演ではキース・ジャレットが加わりチック・コリアとツイン・キーボード体制に。8月のワイト島の頃にはグロスマンに替わりゲイリー・バーツが参加。その後にチックが抜けキースがエレピとオルガンの二刀流になり、デイヴ・ホランドがマイケル・ヘンダーソンに変更となった編成がこのエレクトリック・ファクトリー公演です。このメンバーはこのまま12月のセラー・ドア四日間公演に向かい、俗に言う“セラー・ドア・セッションズ”が行われ、それをテオ・マセロが編集し名盤『ライヴ・イーヴル』に収録されたのは周知のとおり。後に“セラー・ドア・セッションズ”の全貌はオフィシャル・ボックスとしてリリースされ、こちらもマイルスのボックス物の中で上位の人気を誇っています。因みに翌年になると今度はドラマーがデジョネットからレオン・チャンクラーに変わり、パーカッションもアイアートからドン・アライアスとエムトゥーメのツイン編成に変わるため、1970年のマイルスはどこを切り取っても違った演奏が楽しめるのです。
このエレクトリック・ファクトリー公演は過去にも数度のリリースがあり、いくつかのタイプの音源があります。今回収録されている音源は、言うなれば“最もナチュラルなもの”です。この音源はサウンドボードながら、特に序盤に「ビー」という電気ノイズが入っています。今回のマスタリングでは本来の周波数を残すべく極端なノイズ・リダクションを避けたため、過去のタイトルよりも比較的ノイズが大きく感じられると思います。そして編集に関しては、元より『DIRECTIONS』と『WHAT I SAY』に欠落部があり、過去の多くのタイトルでは別音源にてその欠落を補っていましたが、今回はオリジナルの音源だけを使うことにこだわった為、無茶な補填は行わず不自然にならないよう繋ぎ編集のみが施されています。従って“コンプリート”を謳っているタイトルと比べると2分ほど短い収録時間となっています。以上記載した編集内容からイマイチ推しが弱く感じたかもしれませんが、前述したとおり最大の推しポイントは“ナチュラル”。良い素材に細心の注意を払い、必要最低限の丁寧な調理をした一皿。タイトルによっては大胆な調理法も厭わない当VDDレーベルですが、今回の素材を吟味した結果たどり着いた結論です。
堅苦しい解説になりましたが、聴けば納得していただけると思います。序盤ややノイズこそありますが、たちまち圧巻の演奏に飲み込まれること必至。『DIRECTIONS』からゴニョゴニヨと『HONKY TONK』を経て、珍しくドラムからスタートする超ヘヴィー級『WHAT I SAY』の終わりに『SANCTUARY』で「は、ディスクを交換せねば」と気付くはず。別音源から補填してたらこの怒涛の流れは決して生まれないのです。
初回限定特典として同日の映像を収録したDVDRが付きます。映像は、正直言って悪いです。期待しないでください。ぼやけたVHSの映像にサウンドボードの音源が載せてあるのですが、こちらに使われている音源は本編とは別で、特に顕著なのは『DIRECTIONS』後半部分の欠落補填。このDVDだけではとても商品にはなりませんが、本編と合わせて持っている事で資料的価値が上がること間違い無し。尚、この映像は11月17日として出回っているもので表記も17日としてありますが、公演自体は本編(11月15日)と同じものです。メニュー画面はありません。